核融合の発電の仕組みや実用化についてわかりやすく説明してみた

核融合

核融合とは?

核融合とは、軽い原子核が高温・高圧の条件下で結合し、重い原子核を形成する現象です。この過程でエネルギーが放出され、太陽や恒星のエネルギー源としても働いています。科学者たちは核融合を人工的に実現することで、ほぼ無限のクリーンエネルギーを得ることを目指しています。

もっとわかりやすく核融合とは?

  1. 原子って何?: まず、原子というのは、すべてのものを作っているとても小さな粒です。例えば、水や空気、木や石、人間の体も、全部原子でできています。
  2. 原子の中心にある「原子核」: 原子の中心には「原子核」というさらに小さな粒があります。これが核融合の主役です。
  3. 「核融合」とは: この原子核が、とても高い温度や圧力の下でくっつくことを「核融合」と言います。くっつくと、少し大きな原子核になります。
  4. 太陽と星の輝き: 例えば太陽は、この核融合がずっと起こっています。それで太陽からたくさんの光や熱が出て、地球が明るく暖かいんです。
  5. 地球上での核融合: 科学者たちは、地球でもこの核融合を起こそうとしています。成功すれば、たくさんのエネルギーが得られるし、地球に優しいクリーンなエネルギーとして使えます。
  6. なぜ大切?: 核融合は、環境を汚さず、危険なゴミも出さない、新しいエネルギー源として期待されています。これが上手く行けば、地球のエネルギー問題を解決する手助けになるかもしれません。

このように、核融合は小さな原子核がくっつくことで、たくさんのエネルギーを出す現象です。そして、これがうまく行けば、地球にとってとても良いことなんですよ。

核融合発電とは?

核融合の発電とは、軽い原子核が高温・高圧の条件下で結合し、重い原子核を形成する現象を利用した発電のことです。この過程でエネルギーが放出され、発電に利用されます。核融合の発電は、燃料の供給が安定しており、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しないため、クリーンで持続可能なエネルギー源として期待されています。

核融合発電の仕組みは?

核融合発電では、重水素(デュタリウム)と三重水素(トリチウム)の軽い水素原子同士を高温・高圧の状態にし、強力な磁場に閉じ込めて衝突させ核融合反応を起こします。この反応でヘリウムと中性子が生成され、膨大なエネルギーが放出されます。

このエネルギーの一部は中性子によって運ばれ、周囲のブランケットと呼ばれる装置に吸収されます。ブランケットでは中性子のエネルギーが熱に変換され、水を沸騰させて水蒸気を発生させます。
この水蒸気をタービンに当てることで回転させ、タービンに繋がっている発電機が電気を発生させます。この仕組みは火力発電や原子力発電と同じです。

ブランケットでは中性子のエネルギーを利用するだけでなく、中性子とリチウムの原子核が衝突することで三重水素を生成する役割も果たします。この三重水素は核融合反応の燃料として再利用されます。

核融合を使うと発電量はどうなる?

核融合を使うと発電量は、非常に大きくなります。核融合発電では、軽い原子核同士を結合させてエネルギーを生み出す技術です。燃料に用いる重水素は海水中に豊富に存在しており、低コストで莫大なエネルギーを得ることができます。核融合反応によって生み出されるエネルギーは、原子核同士の結合によって放出されるため、非常に大きなエネルギーが得られます。そのため、少量の燃料で多くのエネルギーを生み出すことができるのです。

核融合発電の研究では、一基あたりの発電量は100~500万KW程度になると言われています。これは原子力発電所や大規模な火力発電所と同程度かやや大きい規模です。また、2020年にはイギリスで核融合反応によるエネルギー量が過去最大の59メガジュール(約11メガワット)を記録しました。

約11メガワットのエネルギー量は、一般的な電力発電所の出力と比較するとかなり小規模です。例えば、一般的な火力発電所や原子力発電所の場合、1基の発電設備の出力は数百メガワットから数千メガワットにもなることがあります。したがって、核融合による11メガワットのエネルギー量は、まだ実用段階には達していないことを示しています。しかし、核融合の研究開発が進展すれば、将来的にはより大規模なエネルギー供給が期待されています。

核融合発電の実用化について

核融合発電の実用化には、多くの課題があります。核融合反応を起こすには、非常に高温・高圧の環境を作り出し、維持する必要があります。また、核融合反応によって生み出されるエネルギーを効率的に発電に利用する方法も開発する必要があります。これらの技術はまだ未成熟で、高コストで時間がかかるという問題があります。
核融合発電の実用化に向けて、世界各国が研究開発に取り組んでいます。最大のプロジェクトは、フランスで建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)です。ITERは、2025年に初めて核融合反応を起こす予定で、2035年には純増のエネルギーを生み出すことを目指しています。他にも、米国やイギリス、中国などで、小型の核融合炉の開発や実験が進められています。
核融合発電の実用化の見通しは、まだ不確かです。一般的には、2040年代以降に商用化が可能になると考えられていますが、技術的な困難や予算的な制約などで遅れる可能性もあります。核融合発電がエネルギーの主流になるには、さらに長い時間がかかると予想されます。

核融合発電のコストは?

核融合発電のコストは、まだ正確には分かっていませんが、以下のような見積もりがあります。

核融合発電の建設費は、原子力発電や火力発電と同程度かやや高いとされています。例えば、116万キロワットの発電能力の場合、建設費は4900億円と試算されています。
核融合発電の発電コストは、燃料や運転費、廃棄物処理費などを含めて、7.6円/kWhから5.4円/kWhの範囲になると試算されています。これは他の発電方式と比較して遜色がないか、むしろ安いと言えます。
核融合発電の研究開発費は、国際協力による実験炉ITERの建設費が2.5兆円、原型炉の建設費が2兆円程度と見込まれています。これは高額ですが、将来的にはクリーンで安定したエネルギー源を得ることができると期待されています。

核融合の発電効率は?

核融合の発電効率とは、核融合反応で生み出されるエネルギーを発電に利用する際の効率のことです。核融合発電の発電効率は、現在の技術ではまだ正確には分かっていませんが、以下のような見積もりがあります。

核融合発電の発電効率は、プラズマの制御方法やエネルギーの取り出し方法によって異なりますが、一般的には30%から40%程度と言われています。これは原子力発電や火力発電と同程度かやや高い効率です。
核融合発電の発電効率を高めるためには、プラズマの温度や密度を高く保ち、核融合反応を維持することが重要です。また、核融合反応によって生じる中性子のエネルギーを効率的に熱に変換し、水蒸気を発生させてタービンを回すことも必要です。
核融合発電の発電効率を高めるためには、直接発電と呼ばれる方法も研究されています。直接発電とは、核融合反応によって生じる荷電粒子のエネルギーを直接電気に変換する方法です。直接発電によって、発電効率は60%以上になると期待されています。

関連記事:直接発電とは?

日本での核融合発電はどうなってる?

日本での核融合発電は、以下のような状況です。

日本は国際熱核融合実験炉(ITER)の建設に参加しており、2025年に初めて核融合反応を起こす予定です。ITERはフランスに建設中で、日米欧中韓インドロシアの7国・地域が共同で進めています。
日本は茨城県那珂市にJT-60SAという実験装置を建設しており、2020年に完成しました。JT-60SAは日欧が共同で建設したもので、ITERを支援するために実験データを共有するなどの役割を果たします。
日本は京都大学や日本原子力研究開発機構などの研究機関が核融合炉の研究開発を行っており、中性子が発生しない核融合反応や小型の核融合炉などの新しい技術に取り組んでいます。
日本は京都大学発のベンチャー企業、京都フュージョニアリングが核融合炉の機器を開発しており、欧米の核融合炉関連企業から引き合いがあるといいます。しかし、日本では投資家の動きが鈍く、資金調達が困難な状況です。

核融合発電を行っている企業は?

核融合発電を行っている企業は、以下のようなものがあります。

・京都フュージョニアリング株式会社:京都大学発のスタートアップ企業で、核融合反応を促す中核装置の開発で世界でも先行しています。三菱商事や関西電力など16社が出資しています。

・Commonwealth Fusion Systems 社:米国のスタートアップ企業で、高温超伝導磁石を使った小型の核融合炉の開発を目指しています。マサチューセッツ工科大学と提携しており、エンジェル投資家やエネルギー企業などから資金を集めています。

・General Fusion社:カナダのスタートアップ企業で、液体金属を使った核融合炉の開発を進めています。アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスやカナダ政府などから出資を受けています。

・TAE Technology 社:米国のスタートアップ企業で、プロトンとホウ素の核融合反応を利用した核融合炉の開発を行っています。中性子が発生しないため、安全性や環境への影響が少ないとされています。グーグルや日本の三井物産などから資金を調達しています。

以上のように、核融合発電を行っている企業は、主にスタートアップ企業が多く、各国の大学やエネルギー企業などと協力して研究開発を進めています。

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